一般的には「玄米=ヘルシー」というイメージが強く、実際に食品成分表の栄養素に注目すると「玄米>白米」という優劣関係があることも分かります。
白米は「死んだ米」などと言う人もいます。
ですが、白米は過小評価されていると感じます。少なくとも現代の日本人にとって、白米そのものは敵視すべきものではありません。
もちろん玄米には玄米のメリットはあります。ですが、白米にも白米のメリットはあるわけで、それをここではお伝えしたいと思います。
まず、白米と玄米の栄養価を比較してみましょう。

この表を見ていただけたら分かると思いますが、炭水化物(糖質)以外の栄養素の含有量は玄米に軍配が上がります。
しかし、玄米にもデメリットはあります。
例えば、玄米にはフィチン酸やアブシジン酸といった反栄養素が含まれています。
フィチン酸はミネラルの吸収を阻害したり、アブシジン酸は細胞内で活性酸素を生み、ミトコンドリアにストレスを与えます。
これらは適量なら問題はなく、むしろ適度なストレスになり、それによって健康効果も期待できる物質たちですが、ある程度無毒化しておかないと健康を害する恐れもあります。
具体的な無毒化の方法は別の記事は話そうと思いますが、白米に比べると手間が増えることは確かです。
また、玄米には薄皮がついたままですから、よく噛んで食べないと上手く消化されません。
故に食べ盛りの子供たちや食欲旺盛な人たちの「ご飯をかき込むように食べたい」というニーズを満たせるのは、白米の方です。
それから、残留農薬の問題もあります。残留農薬の多くはお米のぬか層に残ります。
白米はぬか層を除去したものですから、残留農薬の心配が少ないというメリットもあるのです。
では、発芽玄米ならどうでしょう。
発芽玄米とは、玄米を1~2日ほど水に浸し発芽させたお米で、最近ではスーパーでも売られています。
確かに玄米は発芽させることで、フィチン酸やアブシジン酸などの反栄養素の多くは無毒化できます。
なので、発芽玄米は安心ですよ、と言いたいところですが、話はそう簡単ではないのです。
発芽玄米は浸水させたあと乾燥させるのですが、アブシジン酸は水分が減ってくると再活性する性質があります。
分かりやすく言うと、玄米は水分が減ってくると、「まだ、発芽の時ではないみたいね。では、休眠します」と判断して、アブシジン酸(発芽抑制因子)が再び活性化されるのです。
しかも、再活性したアブシジン酸は再び無毒化させるのに、より長い時間を要するという研究結果もあります。
残留農薬の問題も消えるわけではありません。
また、発芽玄米には味の問題もあります。
発芽玄米は、正直あまり美味しく炊き上がりません。どうしても「べちゃべちゃ」した食感になってしまうのです。
ですが、もちろん上手に炊けばということが前提ですが、白米はもっちりとした食感があって、とても美味しく、実際に多くの人たちから支持されているわけです。
このように今回は白米を擁護してみましたが、もちろん玄米の方が優れている点もあります。
玄米の栄養価は白米に比べて、総じて高いのも事実ですし、反栄養素にしても、体内を鍛えるという意味においては、健康効果が期待できるわけです。
味覚に関しても、個人的には玄米のプチプチとした食感は好きだし、ほのかな苦味が美味だと感じます。
「で、結局、どっちがいいの?」という声が聞こえてきそうですが、結論としては、個人個人が決めればいい問題なのかなと思っています。
つまり、白米派がいても、玄米派がいても、二刀流がいてもいいのです。
ただし、注意点としてお伝えしておきますが、白米派の方はしっかりと「おかず」からタンパク質、微量栄養素を摂るようにしてください。
また、玄米派の方は反栄養素の無毒化を行うことと、できたら無農薬のものを選ぶと良いと思います。あと、よく噛んで食べることも忘れずに。
といったところでしょうか。
マクロビオティックのように玄米が最も優れた食材だとする健康法もありますが、それは一昔前の話です。
確かに食事の大部分がお米だった時代であれば、白米ではなく玄米を選ぶべきでしょう。白米だけでは、どうしても不足する栄養素が出てきますから。
ですが、今はお米以外の食材も豊富に手に入る時代です。玄米だけに頼らなくても、栄養バランスを整えることは可能なのです。
玄米食を選択肢の1つとして考えることで、食を楽しむ領域は確実に広がりますし、必ずしも玄米だけに執着することもないのかなと、僕は考えています。