今日は地球上に存在する栄養素の中で、最も古いと言われているアミノ酸について。
アミノ酸とは簡単に言うと、生体のタンパク質を構成するパーツのことです。
自然界には500種類ほどのアミノ酸が存在すると言われていますが、そのうち、僕ら人間の生命維持に必要なものは、わずか20種類だけです。
そして、この20種類のアミノ酸は、9種類の必須アミノ酸と、11種類の非必須アミノ酸に分けることができます。
つまり、必須アミノ酸は体内では合成されない栄養素なので、食事からしっかりと摂る必要があるということです。
9種類の必須アミノ酸とは、具体的には、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、ヒスチジンのことなのですが、これらを、バランスよく摂ることが重要だと、一般的には言われています。
そして、このバランスを数値化したものが「アミノ酸スコア」です。
そのスコアの例をいくつかあげましょう。
鶏肉 100、豚肉 100、鶏卵 100、あじ 100、いわし 100、牛乳 100、大豆 100、えび 84、いか 71、たこ 71、玄米 68、白米 65、トウモロコシ 31
など。
基本的にこの数値が100以上のものが、必須脂肪酸のバランスがよくタンパク質の摂取源に向くと言われています。
ただし、これはタンパク質の摂取量という概念を完全に無視した場合の話です。
例えば、牛乳はアミノ酸スコア100ですが、それを10倍の水で薄めたとしても、アミノ酸スコアは100のままです。
仮に、この薄めた牛乳をコップ1杯飲んだとしても、タンパク質は1gも摂ることはできません。なのに、アミノ酸スコアは100のままなのです。
逆にアミノ酸スコアの低いトウモロコシでも、たくさん食べれば、水で薄めた牛乳に比べて、タンパク質を豊富に摂ることはできます。
必須アミノ酸のアンバランスを、その絶対量でカバーするという考え方です。
ですが、これには問題があり、大量に食べる必要があるので、やはり、必須アミノ酸はバランス良く摂るべきではあるのです。
ただ、実際のところ、アミノ酸スコアにあまり意識する必要はありません。
というのも、これはアミノ酸にフォーカスした話であって、実際に食生活においては、あまり実用的ではないからです。
そのあたりを今日はご説明できればと思っているのですが、まずは、トウモロコシのアミノ酸スコアを表すグラフをご参照ください。
100を下回っているものが2つありますが、これはリジンとトリプトファンです。
つまり、トウモロコシは必須アミノ酸であるリジンとトリプトファンの含有量が低く、これらは基準値の100に満たないので、アミノ酸スコアが低いのです。
では、大豆のグラフも見てみましょう。
このように全ての必須アミノ酸が100を超えているものを、アミノ酸スコア100というのです。
そして、どれか1つでも100に満たないものがあると、アミノ酸スコアは100未満になります。
ですから、大豆は必須アミノ酸に関して言えば、栄養バランスは非常に良いということは、確かに言えます。
そうは言っても、普段の食生活において大豆ばかり食べる方はいらっしゃらないでしょうし、トウモロコシなどアミノ酸スコアが100に満たない食材も食べたいと思うのが普通でしょう。
でも、それで良いのです。というか、食生活とは、そうあるべきなのです。
例えば、アミノ酸スコアの低いトウモロコシでも牛乳を加えて、ポタージュにすることで、そのアミノ酸スコアは上がります。
牛乳のアミノ酸スコアは100ですが、それはどの必須アミノ酸も基準値の100を超えているという意味で、個別のアミノ酸に関しては、その殆どが100を大幅に上回っています。
例えば、牛乳のアミノ酸スコアを個別で見てみると、トウモロコシに不足しているリジンは153%、トリプトファンは136%です。
つまり、加える牛乳の量にもよりますが、アミノ酸スコアの低いトウモロコシも、牛乳と一緒にポタージュにしてしまえば、均一化されて、全てのアミノ酸スコアが100を超えるのです。
このように食材単体ではアミノ酸スコアが低い食材でも、他の食材と一緒に摂ることで、そのバランスは改善されます。
そして、その術こそが「料理」だと、僕は考えています。
いずれにしても、「バランスよく何でも食べなきゃダメよ。」という金言は、こういう理屈でも説明できます。
また、アミノ酸スコアが高い(100以上の)食材というのは、基本的に、肉、魚、卵、大豆あたりで、これらは普段の食生活においても、僕らがタンパク質の摂取源だと認識しているものばかりです。
それが分かっていればですが、あとは複数の食材を組み合わせて、バラエティ豊かな食生活を送るように心がければいいのです。
それで、今日話しているアミノ酸スコアの問題は難なく解決してしまいます。
アミノ酸スコアが100に満たないイカや海老にしても、例えば、ペスカトーレとしていただけば、問題は解決します。
イカや海老は必須アミノ酸のバリンが不足しているのですが、パスタの原料、小麦粉に含まれているバリンのスコアは100以上です。なので、ここで上手くバランスがとれます。
あと、有名な例だと、お米と大豆の組合わせ。
お米は白米にしても、玄米にしてもリジンが足りません。
ですが、大豆に含まれているリジンのスコアは100以上です。
よって、ご飯と納豆、豆腐、味噌汁といった組み合わせは、タンパク質をバランスよく摂取するという意味において、非常に良い組み合わせなのです。
なので、肉や魚だけではタンパク質が足りないなーと思っている方は、もちろん、それ自体の摂取量を増やすというのもいいですが、ご飯に納豆、もしくは豆腐の味噌汁などを組み合わせるのも良い考えです。
そうすることで、タンパク質の摂取源を無理に増やさなくても、実質的な摂取量を増やすことができますから。
是非、参考にして欲しいなと思っています。